
(前編からのつづき)
「きらいになりたくない」を掘り下げる
友人―「ファンってどっからがファンなん?」というあなたの問いに答えが出ましたよ。
大麦―「きらいになりたくない」と思っていたらもうファン。ということは、きらいになりたくなくて古墳の曲を聴くのを避けていた私は、その時点でもうファンだったんでしょうね。
友人―「きらいになってもいいや」って思っているけどファン、なんて状態がありえるんかな。
大麦―ありえん感じがする。
友人―愛の反対は無関心ってことでしょ。
大麦―そうね。
友人―無関心な状態でファン……。
大麦―想像できん。
友人―あ、でも待って。顔ファンってさ……いや、顔ファンにもいろいろいるとは思うんだけど、極論顔の写真だけあってくれればいいっていう顔ファンはいるんじゃない。不祥事を起こしたり、犯罪に手を染めたりしていても、顔さえよければきらいにならないっていう。それって〝無関心なファン〟なのでは?
大麦―だってそれはさ、不祥事を起こしていないから好きってわけじゃないから。
友人―顔が好きなんだよ。
大麦―だから、顔に関心が向いてるから、事故とかで顔に傷がついてしまうのはいやなんだと思うよ。「顔は大事にしてほしいな」みたいなさ。
友人―…………ええっ!?!?!?(絶叫) ああーーーーーーーっ!!!!!!!!(咆哮) そういうこと!?!?!?!?!?(仰天)
大麦―うん。
友人―つまり、「きらいになりたくない」って、人としてきらいになりたくないわけじゃなくて、自分が好きだと感じているポイントが壊れて欲しくないっていうこと!?!?!?(愕然)
大麦―そうじゃない?
友人―………………えええ(ドン引き)
大麦―推しのミュージシャンに対して、「べつにおれはこいつらの音楽が好きなだけだから、彼らが私生活で不祥事を起こそうがかまいません」っていうスタンスをとっている人もいるわけよ。
友人―いるね。
大麦―そういう人は、そのミュージシャンの音楽性に関心の基準があるんだと思う。だから、音楽性は変わってほしくないと思っているんじゃない。それは関心の基準があなたと違うってだけで、無関心なわけではないよね。
友人―ええーーーーっ。…………たしかにな。ある日突然古墳シスターズがRADWIMPSになったら……。
大麦―RADWIMPSになったら(笑)
友人―そしたら私は古墳の追っかけを辞めると思う。だって、それを観たいんだったらRADWIMPSを観に行ったほうがいいよ。なんで古墳シスターズを観に行くのよ(笑)
大麦―えっへっへ(笑)
友人―えー……じゃあ、私は古墳シスターズの音楽性を観に行っているってこと? いや、まあそうか。逆に音楽性以外を観に行ってるってなるとキショいのか。えー。でも、なんかさ。そんな……そんな簡単に切り分けられます? 「彼らが私生活で不祥事を起こそうがかまいません」の人たちってさあ、でもやっぱちょっと傷ついてると思うよ。
大麦―うーん。
友人―なんでそんなことしちゃうんだよって思いは少なからずあって、その上で、「でも、おまえらのこと好きだからな」……じゃない? そんなに綺麗に切り分けられるんですか? 顔ファンって、顔以外のところに本当に興味ないの?
大麦―私は古墳の顔ファンではないからわからない。
友人―あ、そうなの?(笑)
大麦―〝顔だけファン〟ではないですよ!(怒)
「ファンでいたいと思わせてくれ」
友人―ファンになった入り口がそのミュージシャンの音楽性だったとしても、その果てに全部好きになるってことはあるじゃない?
大麦―あると思う。私が実際そうですよね。入り口は松山さんの文章だったけれども、いまはめっちゃ曲好きやし。
友人―……なんか、私が言おうとしてることとあなたのレスポンスがちょっと違う気がするんだけど。それとこれって一緒なのかな?
大麦―どういうこと?
友人―「存在が好き」みたいにならない? 「元気に生きてて欲しい」みたいな。
大麦―ああー! それは、私がBUMP OF CHICKENに対して思ってるやつだ。在ってほしい、みたいなことだよね?
友人―そうそう!
大麦―在ってくれればもうなにしてもいいよ、っていう。
友人―よかった。伝わった。
大麦―私の古墳シスターズ愛は、まだそこまでには達してないかも。でも、あなたはね。
友人―私は音楽っつーものをなーんにも知らなくて、胸を張ってファンだと言えるバンドはたったふたつ。古墳シスターズとたま。なかでも古墳シスターズは飛びぬけて……。
大麦―愛おしい?
友人―「よろしくお願いします!」ってなってる。
大麦―あなたときどき、親戚のおばちゃんムーブみたいなのしますよね(笑)
友人―「ああ……楽しそうでよかった……(涙)」みたいなね。
大麦―たま~に見かけます(笑)
友人―だからこそ、今度は逆に「意に反することを無理にやらないでね」っていうこじらせをたまに生じさせてる。もちろん、それが本当に意に反しているかどうかを彼らに直接聞いているわけじゃないから、そんなのは全部私の思い込みで、すっげ~キショいこじらせなんだけどさ。でも、やりたくないライブをやって、作りたくない曲を作っている古墳シスターズを見るってことが私にとってはきらいになるトリガーになりかねないので、彼らにはできるだけのびのびやっててほしいなと思う。
大麦―「ファンでいたいと思わせてくれ」っていうのが、ファンが推しに対して無意識に願っていることなのかもしれないね。
友人―……その言葉っていろんな捉えかたができると思うんだけど、どの意味で使ってる? 「おれが満足できるようなものを作ってくれよ」っていう意味で使ってるんだったら、いまこの手に持っているはにわでこめかみを殴りつけるけど。
大麦―「ずっとファンでいさせてね」っていう、ある種の祈りとしての「ファンでいたいと思わせてくれ」です!(焦)
友人―そう? よかった。傷害致死事件が起きるかと思った。
大麦―怖え~……。
友人―だからこそ、ファンっていうのは推しの健康を祈るんだと思うよ。ずっとファンでいたいから、病気をしないでね、怪我をしないでねって。
新築の古墳
友人―ファン論ばかり話してきたから、このあたりで「はにわっこの特徴」についても話さない?
大麦―はにわっこの特徴ね。いいですよ。
友人―そうだ。このあいだ私が言った「窯出し」か「出土」か問題。あれ、議論しましょうよ。
大麦―あ、いいですね。
友人―「はにわっこ」って言葉があるくらいだから、「はにわっこ化する過程」を表す言葉があってもいいんじゃないかなと思って、私が勝手に作った言葉があって。
大麦―それが「窯入れ・窯出し」。
友人―知り合いをライブに連れていって、はにわっこ化させるのが「窯入れ」。で、チーン! って焼きあがって、脳味噌が前方後円墳の形になって「古墳シスターズ! 古墳シスターズ!」しか言わなくなったら「窯出し」。
大麦―いい言葉やと思いますよ(笑)
友人―でも、はにわって出土するじゃん? だから、「窯出し」よりも「出土」のほうがふさわしいんじゃないかという説もある。私としては、新しいはにわが作られているっていうイメージを持っているから「窯出し」が正解なんじゃないかなと思うけど、はにわっこの素質を秘めていたはにわたちが眠りから覚めて動き出しているという話なのだとすれば、「出土」のほうが適切なのかもしれん。
大麦―私は、現役で活動している古墳シスターズの周りにどんどんはにわを並べていくイメージなんですよね。
友人―なるほどね!
大麦―だとすると、出土したはにわを並べるのはおかしい。
友人―既にある別の古墳から盗掘してきたみたいになっちゃうからね。
大麦―よって、「窯出し」。
友人―つまり、古墳シスターズっていうのは、新築の古墳なんだ?(笑)
大麦―石室の周りにちょっとずつちょっとずつ土を盛っていっている最中(笑)
友人―「新しいはにわ焼けたよ~」って、はにわたちを運んで並べてってるんだね。
大麦―「このレーンは並んだから、次はもう一周外のレーンをいこう」みたいな。
友人―一体誰の墓なんだよ(笑)
大麦―誰でしょう(笑)
友人―ってことは、この古墳はいつか完成するんだね。木が生えて山みたいになって。……「あれって、山?」「いや、あれ古墳古墳」「ああ、古墳か……」って語られるようになる。
大麦―「ほら、周囲にたくさんはにわが並んでるでしょ」。
友人―あ、この人、古墳をちゃんと見たことない人だ。古墳って、外から見るとはにわが並んでるのは見えませんよ。
大麦―えーん(笑)
友人―じゃあ、今後は「窯入れ」「窯出し」という表現を使っていきましょうね。
大麦―我々の間だけでね。
友人―念のため言っておくと、これはほんまに好き勝手言ってるだけなんで、読者のみなさんに対してはなんの強制力もないです。もしも気に入ったら使ってください(笑)
はにわっこが古墳シスターズに求めるもの
友人―ところで、はにわっこって古墳シスターズになにを求めてるんだろうね。
大麦―それはやっぱり、「つつがなくライブをしつづけてほしい」じゃないですか。
友人―どんなライブを求めているんだろう。
大麦―それは人によるんじゃない。
友人―最大公約数を探そうぜ。
大麦―「本人たちが満足できるライブ」?
友人―あ、そう? なるほどなあ。
大麦―えっ、違う?
友人―私も真剣に考えたけど……「でかい声で歌ってほしい」かもしれん。みんなそれは求めていそうな気がする。
大麦―ああ~。
友人―だって、ちっちゃい声で歌う古墳シスターズって、だいぶアイデンティティを失ってない? 客席にホンマに誰一人おらんくてもでかい声では歌っていてほしいな。でかい声を聴きに行ってる節はあるもん(笑)
大麦―それはそうやな。
友人―「暴れてほしい」もある。静かに棒立ちになってギターを弾いている松本くんを、あなたは観たいですか?
大麦―ちょっと心配になってくる(笑)
友人―例えば、60歳とか70歳とかになって―70歳でパンクバンドか(笑)―暴れるとしんどいって体になったら、そのときには再度審議が入るけれど、少なくとも50歳くらいまでは暴れていてほしい。
大麦―あと、○○をしてほしくない?
友人―(クソでかため息)………それね。
大麦―○○をしなくなった古墳シスターズは、ちょっとなんか、アイデンティティが半分くらい削れてる感じがしませんか。
友人―……………………ここが難しいところで。
大麦―おん。
友人―私は「○○をやってほしい」って言われて○○をやってる古墳を観るのはいやなんだよ。してほしいって言われてそれをやってるような古墳になってほしくない。
大麦―ああ……。
友人―だからあなたに言わないでほしかった。
大麦―ごめんなさい。伏字にしましょう。
友人―だって、昔は「○○が長いからもっと短くしろ」って言われてたんですよ。それでも彼らはずっと○○をしてたの。私は「それだな」と思ってた。それを観に行ってた。もちろん、ちゃんとやってほしいとは思うよ、○○というものを。でも、「やってくれてありがとう」だなんて言われてやってるような○○なんかじゃあ、もう私はなんにも満足できないから。そんなことで「よし、期待に応えられたぞ」なんて思わないでほしい。
大麦―わかる。
友人―でも、でかい声と大暴れについては、たとえしんどくてやりたくなかったとしても無理強いしたい(笑) 我々はそれを期待しているんで。
はにわっこ三ヶ条を作ろう!
大麦―最後に、はにわっこ三ヶ条を作っておきましょう。
友人―はにわっこ三ヶ条ってなんすか。
大麦―はにわっこたるものかくあるべし、っていう条文を。
友人―我々の間だけに適用されるやつ?
大麦―今後なんかあったときのためにね。
友人―なんかあったときのために!?
大麦―なんかあったときに、「おまえ、はにわっこ三ヶ条を忘れたんか!」みたいな感じで使いたい。
友人―それってつまり、我々が今後やらかしそうなことを話すの?
大麦―やだ?
友人―踏み外してしまいそうだから締めていきましょうっていう話なんだとすると、その話をするのはけっこういやだな。だって、冗談のつもりで「メンバーとセックスしない」とか言ったりすると、「メンバーとセックスする可能性があるってこと!?」って話になるじゃん。
大麦―それは気まずいな(笑)
友人―そんな可能性があってたまるかよ。
大麦―じゃあ、高みを目指す方向で話しましょう。
友人―ああ、もっとこういうはにわっこになりましょうっていう条文? それならいいね。
大麦―第一ヶ条は「感想をいっぱい書こうね」じゃないですか?
友人―いっぱいっていうか……短くてもいいから読み応えのある感想を書こうね、だな。
大麦―「感想を書こうね」ですね。受け手に甘んじてはならぬ、受けとったからには昇華せよ、と。
友人―おまえのクリエイティビティはどこなん、という話をしています。
大麦―では、第二ヶ条。
友人―……つまり、我々がより理想的なはにわっこになったときになにを成し遂げているかという話でしょ。
大麦―「布教しようね」は?
友人―でもそれだと、周囲全員に布教し終わったあとにやることがなくなるよ。ネズミ講の発想ですよ。
大麦―難しいな。
友人―「体調不良のときはライブに行かない」は? まあ、今も昔もそんな状態でライブに行ったことは、私はないですけれども。しかし、ライブに行って風邪をもらって帰ってきた経験は数限りなくあるので、この常識を守ってないライブ参加者っていうのはどこかに絶対いると思う。
大麦―それか、ライブハウスの過酷な環境であなたの自律神経がイカレてしまったかだね(笑)
友人―11時間耐久ライブとかいうわけのわからん企画に伴走した私が悪いという説も全然ある。
大麦―類似の話だけど、「破産しない」も大事じゃない?
友人―それなら、「持続可能な推し活をしようね」でまとめよう。体調が悪いときや金がないときはライブに行かない。
大麦―仕事を休みすぎない、も追加で(笑)
混沌の第三ヶ条
友人―ラスト。第三ヶ条。
大麦―うーん。
友人―……もうだめだ、下ネタしか出てこねえ。「メンバーでヌかない」とか(笑)
大麦―ええーっ(笑)
友人―「ヌかない」。もうだめですか、そちは?(笑)
大麦―ノーコメントで。
友人―ダメそうだな。
大麦―ちなみに、なんでヌいちゃいけないんですか?
友人―……たしかにな。なんでヌいちゃいけないんだろう。けど、高尚なはにわっこはヌいてなさそうな感じしません?(笑)
大麦―いや、高尚なはにわっこと理想的なはにわっこはまた違いますよ!
友人―じゃあ、理想的なはにわっこはヌいてるってこと? あ、ヌいてるのもいるってことか?
大麦―ヌいててもそのことを表に出さないのが、理想的なはにわっこ。
友人―「セクハラしない」ってこと? そりゃしねえだろ。しちゃだめだよ。
大麦―しちゃだめだから、「セクハラしない」って約束しよう。
友人―もうちょっと己に厳しくありてえな(笑) そんな、当たり前にしないことを「しない!」って高らかに掲げてもなんもかっこよくないんだよな。
大麦―「推しを傷つけない」ならどう?
友人―あたりめえなんだよ。「推しを傷つけない」じゃなくて「人を傷つけない」なんだよ(笑)
大麦―ぐぅ~~~~。
友人―「ときどき考える」は?
大麦―ん? ……え?
友人―「ときどき考える」。古墳シスターズのことを。いいよ、毎日考えたっていいけど。考えない期間があったとしても、ときどき考える。
大麦―この日のこの時間は古墳について考えましょう、ってこと?
友人―違う違う違う違う。礼拝みたいなことじゃなくて。わかってねえな!
大麦―違うんだ。
友人―つまりね、…………あーあ(笑)
大麦―なんです?
友人―伝わらねえんだ。そうですか(笑)
大麦―なんです!?
友人―読者のみなさんはわかりましたよね、私の言いたいこと。
大麦―どういう意味!?
友人―「ときどき考える」ってことですよ。7年、10年、忘れていたとしても、ときどき考えるのよ。ふとした瞬間に。
大麦―おーん?
友人―どう考えるかはわからないけれども。口ずさむのかもしれないし、「いまなにしてるんだろう」って思いを馳せるのかもしれない。
大麦―〈八月のある日〉に?(笑)
友人―〈八月のある日〉じゃねーよ。おい、いま私、こんなに真面目にしゃべってんのに! ちょっと待ってよ。信じらんねえな。
大麦―ごめんって(笑)
友人―あなたにそういう情緒はないってこと? ホントにまったくわかってないの。私が言ったこと。
大麦―なんかちょっと、ラブやなとは思う。
友人―ラブ、ってのはどういうこと。
大麦―愛情。愛情ですよ。
友人―「ときどき考える」っていうのが、愛情的な行為ってこと?
大麦―それをやった経験がないからピンときてない。
友人―そっか。いまんところあなたは古墳シスターズに対して「ずっと考える」をやってるから、「ときどき考える」がわかってないんだ。え、でもさ、あなただってBUMP OF CHICKENのことを365日考えてたりはしないでしょ。
大麦―365日は考えない。だけど、週1では考えてるよ。
友人―それじゃん。
大麦―これなの?
友人―週1では考えるけど、そのときに「日曜午後5時がやってまいりました! BUMP OF CHICKENについて考えるお時間です!」って考えているわけではないでしょ。なにげない瞬間にふっと思い起こされるんじゃんか。
大麦―あー。
友人―なんかこう、生活の端々にその存在があるわけよ。特別思い出そうとしているわけではないときでも、「あっ、アレだ」ってなったり「おっ、どうだったかな」ってなったり。
大麦―コンビニで売られている「はにわくんのチョコザック」を見て「おっ、はにわや!」と思うとか?
友人―…………わかってないな!! 違うんだよ。違うよぉ~!!!
大麦―それが違うんだったら、もうわからん(笑)
友人―雨が降りはじめた瞬間に、ふっと思い出すんだよ。なにかを。それはもう古墳シスターズのことではないのかもしれないけれども。ふっと思い出して、その思い出したということにすら気づかず、そんな瞬間があったことは忘れていくんだよ。しかし、それが「ときどき考える」ということなんだよ。ね、わかるでしょ!? あなた! いまこれを読んでいるあなた! わかりましたよね!?
大麦―たぶん私はわかったって言うと嘘になるから。
友人―わかんないんだ。
大麦―だからあえてこれを第三ヶ条にして、「『ときどき考える』ってどういうことなんだろう」ってときどき考えることにする。
友人―ある日、「ああ、そういうことだったのか」とわかるのかもしれません。
はにわっこ三ヶ条
・感想を書こうね
・持続可能な推し活をしようね
・ときどき考える