
深夜高速
数十分前から助手席も後部座席もすっかり静かになっていた。バックミラー越しに小幡さんと松山さんの寝顔を確かめながら、おれはカーステレオのボリュームをギリギリまで下げた。
甲南パーキングエリア(下り)の駐車場はがら空きだった。建物にいちばん近いスペースに停めて、三人を起こさないように静かに機材車を降りた。伸びをすると背中やら腰やらあちこちからゴキゴキと太い音が鳴った。高松まではあと三時間ちょっと。まあ、この調子ならなんとかなる。
用を足して、自販機で買った缶コーヒーを飲み切って、キャメルの二本目を半分吸ったあたりで、「ラース」と不意に声がかかった。松本さんが助手席から降りて来ていた。
「起きて大丈夫なんすか」
「いや、ラースこそ。そろそろ交代せんといけんじゃろ」
「交代ったって、松山さん熟睡してますし」
「ほんならおれが……」
「千鳥足で言うセリフじゃないっすよ」
まったくの平地でつまずきかけた松本さんへ駆け寄って身体を支える。松本さんの息からか汗からか、アルコールのにおいが強く漂っていた。打ち上げから何時間かしか経っていないのだから当然だった。
追加でタバコ一本ぶん休憩したあと、二人で機材車に戻り、高松に向けて再出発した。後部座席組は寝入ったままだったが、松本さんは完全に目が醒めてしまったらしかった。手持ち無沙汰にカーステレオをぽちぽちと操作して、おれの作ったプレイリストから次へ次へと曲を流していく。数秒のイントロとスキップ操作音の繰り返し。六曲目のイントロ。
「あー、この曲、松本好きやろ」
「おん。わかっとるやん」
曲にあわせて身体を揺らしながら、松本さんが満足気に返事した。それから「どうせ起きんやろ」とか言ってボリュームを思い切り上げていった。